幹細胞培養上清液点滴療法
■ 1. 概要
幹細胞培養上清液(Stem Cell Conditioned Medium: SCCM)は、幹細胞を無菌的環境下で培養した際に細胞外へ分泌されるサイトカイン、成長因子、エクソソーム、微量タンパク質などを含む上澄み液を精製したものです。
幹細胞そのものを投与する「細胞移植」と異なり、細胞を含まない無細胞製剤である点が特徴です。
現在、美容医療・再生医療領域において、
•点滴
•局所投与(皮下注・静注は要注意)
•外用
等で利用されていますが、本治療は自由診療であり、国内承認医薬品ではありません。
臨床的有効性・安全性に関する長期データは限定的なため、適切な説明と同意が必要となります。
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■ 2. 幹細胞培養上清液の構成成分
上清液には以下のような生理活性物質
が含まれています。
● 成長因子
•FGF(線維芽細胞成長因子)
•PDGF
•TGF-β
•VEGF
•IGF-1
● サイトカイン
•IL-6
•IL-8
•IL-10
•TNF-α(製品によっては極低量)
● エクソソーム(細胞外小胞)
細胞間シグナル伝達に関与。
miRNA・タンパク質などを運搬し、組織修復・抗炎症作用の可能性。
● 細胞増殖関連タンパク質
細胞外マトリクス、酵素、抗酸化関連酵素など。
※製造元・由来細胞により組成は大きく異なり、臨床効果も標準化されていません。
1. 脂肪由来幹細胞培養上清液(ADSC-CM)
■ 特徴
•成人脂肪から採取されるMSC
•低侵襲で採取でき、分泌量が多い
•美容領域(皮膚再生・抗炎症)で利用されることが多い
■ 主要な生理活性物質
① 成長因子
成長因子 特徴・働き
FGF-2(bFGF) 細胞増殖、コラーゲン合成促進。皮膚美容分野で重要。
VEGF 血管新生促進。創傷治癒のサポート。
HGF 抗炎症・組織修復作用が強い。
TGF-β1(低濃度) ECM形成の調整。高濃度の場合線維化リスク。
② サイトカイン
サイトカイン 特徴
IL-6 抗炎症・線維芽細胞活性。
IL-8 皮膚修復の早期段階に関連。
MCP-1 組織修復プロセスに関与。
③ エクソソーム(EV)
•皮膚細胞の増殖促進
•抗炎症miRNAを多く含む
•コラーゲン・エラスチン産生をサポート
■ 機能の特徴
•美肌・創傷治癒系の成長因子が豊富
•抗炎症作用が比較的強い
•ドナー年齢の影響を受けやすい(高齢ドナーでは分泌能低下)
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2. 骨髄由来幹細胞培養上清液(BM-MSC-CM)
■ 特徴
•伝統的に再生医療分野で研究されてきたMSC
•血管修復や免疫調整能が高いとされる
•エクソソームの質が他よりやや安定
■ 主要な生理活性物質
① 成長因子
成長因子 働き
VEGF(高濃度) 血管新生を強く促進。心血管・虚血領域で注目。
PDGF 創傷修復・血管平滑筋の調整。
IGF-1 組織修復・筋肉再生に関与。
HGF 抗線維化・抗炎症作用。
② サイトカイン
サイトカイン 特徴
IL-10 免疫抑制系サイトカイン(抗炎症)。
TGF-β(低〜中濃度) 組織修復・免疫調整。
IL-1Ra 炎症を抑制し痛みの軽減に寄与。
③ エクソソーム
•免疫調整作用が比較的強い
•miRNA群が炎症抑制系に偏る
•関節・整形領域での応用研究が多い
■ 機能の特徴
•血管・免疫調整系の活性物質が豊富
•再生医療(整形外科、虚血領域)での研究蓄積が多い
•脂肪・臍帯より供給が少なく高コスト
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3. 臍帯血由来幹細胞培養上清液(UCB-MSC-CM)
■ 特徴
•新生児臍帯血由来で「若い細胞」
•活性が高く、エクソソーム含有量が非常に多い
•抗炎症・抗老化の研究分野で注目
■ 主要な生理活性物質
① 成長因子
成長因子 特徴
FGF-2(高濃度) 非常に強い細胞増殖能。皮膚再生に有利。
VEGF 血管新生促進(脂肪・骨髄より高いことも)。
EGF 上皮細胞の成長促進。美肌領域で重宝。
IGF-1 細胞修復系に関与。若い組織の特徴。
② サイトカイン
サイトカイン 特徴
IL-10(高濃度) 強力な抗炎症作用。
GM-CSF 造血系サポート。
IL-1Ra 炎症抑制。
③ エクソソーム
•含有量が最も多い傾向
•若い細胞由来のためmiRNAの活性が高い
•抗炎症・抗老化・組織修復作用に寄与
■ 機能の特徴
•**最も高い「生理活性」**を持つ傾向
•成長因子・エクソソームが豊富
•再生医療から美容領域まで幅広く応用
•価格が最も高い
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4. 三種類の構成物質の比較まとめ(医療者向け表)
■ 生理活性物質の傾向
上清液種類 成長因子 エクソソーム量 サイトカイン 主な特徴
脂肪由来 FGF, HGF, VEGF 中〜高 IL-6, IL-8 皮膚・美容領域に強い、抗炎症
骨髄由来 VEGF, IGF-1, PDGF 中 IL-10, IL-1Ra 血管修復・免疫調整に強い
臍帯血由来 FGF, VEGF, EGF, IGF-1 非常に高い IL-10(高濃度) 若さ(細胞年齢)、抗炎症・抗老化
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5. まとめ
•脂肪由来:美容・皮膚領域に適した成長因子が豊富
•骨髄由来:免疫調整・血管修復系の活性が強い
•臍帯血由来:最も若く、成長因子・エクソソーム量が豊富で「高い活性」が得られやすい
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■ 3. 上清液の由来別特徴(医療者向け)
① 脂肪由来幹細胞培養上清液(ADSC-CM)
特徴
•成人脂肪組織から採取
•MSC(間葉系幹細胞)の中でも増殖性が高い
•抗炎症性サイトカインが豊富
•美容領域(皮膚質改善、創傷ケア)で使用されることが多い
メリット
•製造が比較的容易
•安定供給が可能
•美容皮膚領域で臨床使用歴が長い
留意点
•ドナー年齢の影響を受けやすい
•再生能は臍帯血由来に比べるとやや低い
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② 臍帯血幹細胞培養上清液(hUCB-MSC-CM)
特徴
•新生児臍帯血から採取
•若い細胞のため、成長因子・エクソソーム量が多い傾向
•抗炎症・組織修復系シグナルが強い
メリット
•低免疫原性
•エクソソーム量が豊富
•医療機関での再生医療メニューにおいて人気
留意点
•供給は限定的で価格が高い
•原料の倫理的・法的管理が重要
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③ 骨髄幹細胞培養上清液(BM-MSC-CM)
特徴
•骨髄由来の間葉系幹細胞
•抗炎症性シグナル・血管新生因子がやや高い
•研究段階では組織再生能力が高いとされる
メリット
•医療再生領域で基礎研究が豊富
•ダメージ組織への反応性が高い
留意点
•採取が難しく高価
•脂肪・臍帯血に比べ普及率が低い
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■ 4. 点滴投与について(医療者向け)
● 投与量の目安(製剤により異なる)
•5〜10mLの原液を生理食塩水100mLへ希釈
•点滴時間:30〜60分
•投与頻度:1〜4週間間隔
※国内外で標準化されたプロトコルは存在せず、製造元の推奨量・クリニックの方針による。
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■ 5. 期待される生理学的作用(研究段階)
※臨床効果は確立していません
•組織修復プロセスのサポート
•抗炎症シグナル伝達
•血管新生のサポート
•細胞外マトリクス産生の促進
•皮膚再生の補助(美容領域)
重要点:
上清液は医薬品ではなく、治療効果を保証するものではありません。
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■ 6. 安全性・リスク・禁忌
● よく報告される軽度反応
•点滴部位の痛み
•発赤・腫脹
•一過性の倦怠感
● 重篤なリスク(可能性は低いが説明が必要)
•アレルギー反応
•発熱
•不純物混入(製造品質に依存)
•蛋白質性製剤としての免疫反応リスク
● 投与禁忌
•妊娠・授乳中
•小児
•活動性悪性腫瘍
•免疫抑制下の患者
•重度のアレルギー歴
•製剤の原料に対するアレルギー
● 注意すべき患者
•がん治療中
•自己免疫疾患
•慢性疾患で服薬中
•血液製剤に不安のある患者
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■ 7. 品質管理の重要性(医療者向け)
幹細胞培養上清液は製造品質が臨床効果と安全性に直結します。
● 必ず確認すべき項目
•ドナー情報・感染症スクリーニング
•細胞培養条件(無血清/低血清培地)
•エンドトキシン試験
•無菌試験
•タンパク質濃度・エクソソーム量
信頼できる製造元から入手することが必須です。
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■ 8. 法定記載事項(医療者向け)
•本治療に使用する上清液は医薬品医療機器等法上、承認を受けていない製剤です。
•保険適用外の自由診療となります。
•国内において同等の承認代替品は存在しません。
•海外でも重大な安全性シグナルの報告は現時点でありませんが、長期データは不足しています。
•投与前には必ず十分なインフォームドコンセントを取得してください。
骨髄由来幹細胞培養上清液 1ml 1本 ¥4,500
骨髄由来幹細胞培養上清液 5ml 1本 ¥20,000
脂肪由来幹細胞培養上清液 1ml 1本 ¥4,500
脂肪由来幹細胞培養上清液 5ml 1本 ¥20,000
臍帯由来幹細胞培養上清液 1ml 1本 ¥5,500
臍帯由来幹細胞培養上清液 5ml 1本 ¥25,000
臍帯由来幹細胞培養上清液 パッチ 1セット(左右) セット ¥10,000
ドライアイス1㎏ 1㎏ ¥500